悲しくても腹は減る

気付けばカレンダーも12月になり。
いよいよ今年も残す所、後1ヶ月になりました。
仕事やら原稿やら己の体調やらで何が何だかよく解らなくなりつつある大城です。

…今日はちょっといつもより気分がダークというか、はっきり言って凹んでます。
お陰で仕事も上の空で原稿も進まず、リネをやっても溜息ばかりで全くと言ってやる気が起きない現状。
原因は解ってるんですよ。
どうしようもない事だとも思ってるんですよ。
それでも気持ちは平静を保てる事もなく、見事なまでに低迷中。



我が家には俺が中2の時に拾ってきた猫が居ます。
名前はトラ猫だったからという安直な理由で 『寅吉』 。
他の猫よりも一回りは大きい体をしていた彼は、そのなりとは裏腹に非常に大人しく。
そしてとても人懐こくて優しい猫です。
まるで人の言葉が解っているかのような素振りを見せ。
“猫は家につく” という言葉を綺麗に裏切ってくれる程、人についていた犬のような性格の猫。

そんな一風変わった彼はとても子供が好きで、拾ってきた当時にはまだ幼かった弟から始まり。
妹4号、飼い犬、我が小娘…と尽く子供の面倒を見る、という逸話を持っています。
彼の逸話はこれに留まらず、近所のボスに成り上がった頃に吠え掛かってきた野良犬の鼻面に爪を立てて撃退した…なんて言う武勇伝さえあるほど。

近所の人の間でも人気者で。
散歩に出た彼を通勤前の人が撫でていき。
日向ぼっこをしている彼を立ち話していたおばさん達が撫でていき。
夕暮れ時に学校帰りの子供達が撫でていき。
夜、出歩いていたら近所の人に心配されて家まで連れられてきた彼。

今年で満14歳でした。
秋に甥っ子の悪戯のせいで後ろ足を骨折したにも拘らず、触診した医者が驚くほど大人しく診察させ。
結局、綺麗には治らなかった後足を軽く引き摺るようにしながらも元気に散歩に出て回っていた丸っこい後姿。
名前を呼ぶとどこからともなく出てきて擦り寄ってきた柔らかい毛並みは、冬の足音がする頃になっても生え変わらずに夏毛のままで。
鼻炎と歯槽膿漏を患ってたせいで始終くしゃみをしていたちょっと情けなくなった横顔。



そんな彼の姿を最後に見たのは3日前の仕事帰り。
家の前に佇んでいた彼を家に呼び込もうと扉を開けて待ったにも関わらず…彼は動く事無く、ただじっと俺の事を見ていた…それが最後。

もう彼が家に帰らなくなって4日が経ちます。
居なくなる前日は何故か食事を1回も取らなかったのだそうです。
14歳で5日も食事を取らずに。
この寒空の下を夏毛のままで。
この12月の冬空の下で先日降った雨が追い討ちをかけるように。



…彼が生きている、という保障は限りなく0に近いだろう。



探しても見つからないまま3日が過ぎて。
唐突にポツリと漏らした家族が漏らした言葉が胸を貫いた。

「いい猫だった。あんなにいい猫はこれから先、二度と居ないぞ」

寂しそうに…でもどこか誇らしげに呟いた父。

「洗濯してる時とかいつもくっついて回って…優しい猫だったね」

泣き顔でそう笑った母。
今にもどこかから顔を出して、バツが悪そうな気配を滲ませて “心配かけてゴメンな” とでも言うように鳴いて足元に擦り寄ってくる彼の声や姿がもうこの世に存在しないなどとは思いたくなかった。
あの柔らかな毛で覆われた体を今一度、抱きしめたいのに。

…彼の面倒を一番見ていた母と祖母は彼の食器やトイレを俺が見えない場所にしまい込んだ。
それは彼らよりも長く生きる定めの俺達が出来る、唯一の手段のよう。
彼はもう居ない。
その事をゆっくりと現実に、日常に馴染ませる為に。



今日の夕飯は椎茸と豆腐が具の味噌汁でした。
それは彼が大好きだったもので…これが夕食に並んだ日には必ず帰ってきていた彼。
今日はいつもの定位置にない食器とそこに居ない彼の姿。
泣きながらの夕食は味さえも解らぬままに終わりました。



彼が居てくれて、本当に楽しかった毎日。
彼の存在が唯一の拠り所になった過去。
彼の姿が、気配がそこに在るだけで何故か和んだ日々。

彼がくれた沢山の笑顔と幸せの数だけ、彼も幸せだったと思っていてくれたならいい。
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by acoustic-peace | 2005-12-01 22:10 | 日々徒然 | Comments(0)

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